欠損填補とは?欠損填補のメリット・デメリットや手順を解説!

「欠損填補」という言葉をご存知でしょうか。聞いたこともない、というが多いのではないでしょうか。欠損填補を行うことで、将来の配当の可能性や金融機関からの評価を高めたり、法人住民税 均等割の節税対策にもなります。ぜひ、この機会に欠損填補という手法を理解しておくとよいでしょう。

この記事では、欠損填補の概要やメリット・デメリット、手順を解説していきます。

目次

欠損填補とは?

欠損填補とは、貸借対照表の利益剰余金がマイナスとなっている場合に、資本剰余金を取崩し、利益剰余金のマイナスに充当することをいいます。そのため、減資と同様に、あくまで貸借対照表の純資産内での組み替えにすぎず、実際の発行済株式総数が減少することや会社資金が流出することはありません。

<具体例>
・欠損填補前の純資産
①資本金・・・・・・・1,000,000円
②資本剰余金・・・・・1,000,000円
③利益剰余金・・・・・▲500,000円
④純資産合計・・・・・1,500,000円(=①+②+③)

・欠損填補後の純資産
①資本金・・・・・・・1,000,000円
②資本剰余金・・・・・・500,000円
③利益剰余金・・・・・・・・・0円
④純資産合計・・・・・1,500,000円(=①+②+③)

欠損填補の上限額

資本剰余金を利益剰余金に振替ることは、「資本と利益の混同」になるため、原則として、企業会計上は認められていません。しかし、利益剰余金の金額がマイナスとなっている場合には、その利益剰余金のマイナスの範囲内であれば、以下の理由から資本剰余金を利益剰余金に振替ることは資本と利益の混同には当たらないと考えられています。

負の残高になった利益剰余金を、将来の利益を待たずにその他資本剰余金で補うのは、払込資本に生じている毀損を事実として認識するものであり、払込資本と留保利益の区分の問題にはあたらないと考えられる。

出典:企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」

そのため、欠損填補の上限額としては、利益剰余金のマイナス金額ということになります。

いつ時点の利益剰余金を基準として欠損填補できるのか?

欠損填補は、利益剰余金のマイナス額を上限額として実施することができますが、その利益剰余金のマイナスは、いつ時点の金額を基準とするのでしょうか。

それは、確定決算における利益剰余金のマイナスとなります。すなわち、臨時株主総会で欠損填補を行う場合、直近の定時株主総会で承認された計算書類の貸借対照表上の利益剰余金のマイナスの金額が欠損填補の上限額ということになります。そのため、当期中に発生した利益剰余金のマイナスは、欠損填補の対象にならないため、注意が必要です。

また、定時株主総会で欠損填補を行う場合、同定時株主総会で承認された計算書類の貸借対照表上の利益剰余金のマイナスの金額が欠損填補の上限額になると考えられます。

欠損填補のメリット

欠損填補を行うことで、様々なメリットがあります。

1. 利益剰余金からの配当が可能となる時期を早めることができる

利益剰余金がマイナスとなっている場合、その利益剰余金のマイナスを上回る当期純利益を計上しなければ、利益剰余金から配当することはできません。そこで、欠損填補により利益剰余金のマイナスを減少することで、将来の配当が可能となる時期を早めることができ、株主の期待に応えることができるようになります。

2. 金融機関からの評価が良くなる

貸借対照表上の利益剰余金がマイナスということは、過去からの業績が累積赤字となっているということを意味しており、金融機関から見ると貸借対照表の見栄えが良くありません。そのため、欠損填補により利益剰余金のマイナスを解消することで、多少なりとも金融機関の評価が良くなることが期待されます。

3. 法人住民税 均等割の節税対策になる

以前は、欠損填補を実施したとしても、法人住民税 均等割の基準となる「資本金等の額」が変わることなく、節税対策にはなりませんでした。

しかし、平成27年(2015年)の税制改正により、均等割の税率を判定する際に使用する「地方法人税上の資本金等の額」は、「資本金等の額-無償減資による欠損填補額+無償増資額」という算定式で算定することになったため、欠損填補による均等割の節税が可能となります。

そのため、利益剰余金のマイナスの会社は、欠損填補による節税対策が可能かどうか、顧問税理士に相談してみるといいでしょう。

欠損填補のデメリット

欠損填補には、様々なメリットがありますが、デメリットはほとんどありません。

1. 事務負担がかかる

欠損填補を行うためには、株式総会の普通決議が必要になります。また、無償減資による欠損填補を行う場合には、通常の欠損填補の手続きに加えて、株主総会 特別決議及び債権者保護手続きも必要になります。そのため、事務負担が発生することが、欠損填補を行うことのデメリットといえるでしょう。

欠損填補の手順

欠損填補の手順は、その会社の貸借対照表の状況により異なります。

1. 欠損填補のみを行う場合

欠損填補を行う場合には、剰余金の処分について株主総会の普通決議(会社法 452条)する必要があります。

2. 減資及び欠損填補を行う場合

資本剰余金が少ない会社の場合、まず減資を行い、資本金から資本剰余金へ振替えます。そのうえで、欠損填補を行うことになります。なお、減資の手順は、以下のとおりです。

<無償減資の手順>
手順1:株主総会の特別決議
手順2:債権者保護手続き
手順3:無償減資の効力発生
手順4:登記申請

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おわりに

欠損填補について解説してきました。欠損填補の取り扱いは、税法や会社法、会計基準など複雑なため、顧問弁護士及び顧問税理士に相談したうえで、実施するようにしましょう。

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