合同会社から株式会社へ組織変更する手順は?メリット・デメリットも解説!

合同会社は、株式会社と比べて設立費用が抑えることができるなどのメリットがあるため、起業や資産管理会社の設立にも適した会社形態といわれています。しかし、実際に起業してみると、事業が順調に軌道に乗り、合同会社から株式会社に組織変更するケースも少なくありません。

この記事では、合同会社から株式会社への組織変更の手順や税務上の取扱い、メリット・デメリットを解説していきます。

目次

合同会社から株式会社への組織変更の手順

会社法では、合同会社と株式会社との間での組織変更が認められています。ここでは、組織変更の具体的な手順を解説していきます。

なお、合同会社から株式会社への組織変更は、手続き開始から1.5ヶ月~2ヶ月ほどかかります。そのため、組織変更をする際は、手順をよく理解し、十分に余裕をもったスケジュールを確保して手続きを進めるとよいでしょう。

手順1. 組織変更計画の作成

合同会社から株式会社へ組織変更をする場合には、まず組織変更計画を作成しなければなりません。
組織変更計画には、主に次のような事項を定める必要があります。

<組織変更計画への記載事項>
・組織変更後の商号(会社名)
・組織変更後の事業の目的
・組織変更後の本店の所在地
・組織変更後の発行可能株式総数
・組織変更後の株式会社の定款で定め事項
・組織変更後の株式会社の取締役の氏名
・組織変更後の株式会社が会計参与設置会社となる場合には会計参与の氏名又は名称
・組織変更後の株式会社が監査役設置会社となる場合には監査役の氏名
・組織変更後の株式会社が会計監査人設置会社となる場合には会計監査人の氏名又は名称
・組織変更する合同会社の社員が組織変更に際して取得する組織変更後の株式会社の株式の数又はその数の算定方法
・組織変更する合同会社に対して、その持分に代わる金銭等を交付するときは、その金銭等に関する事項
・組織変更の効力発生日

手順2. 総社員の同意

組織変更の効力発生日の前日までに、合同会社から株式会社への組織変更計画について、組織変更する合同会社の総社員からの同意を得る必要があります。なお、ここでいう社員とは、従業員ではなく、合同会社の出資者兼経営者のことをいいます。

手順3. 債権者保護手続き

合同会社から株式会社へ組織変更をすることは、会社の債権者にとって少なからず影響が生じる可能性があります。そのため、組織変更する会社は、会社の債権者が1ヶ月を下らない一定の期間内に組織変更に対する異議を述べることができる旨を官報により公告し、かつ、知れたる債権者には個別催告をしなければなりません。

ただし、定款に新聞公告又は電子公告など官報以外の公告方法を定めている場合、定款に記載の公告方法に加えて、官報による公告をすることで個別催告を省略することができます。

手順4. 組織変更の効力発生

債権者保護手続きを行い、一定の期間内に債権者からの異議申し立てがなされなかった場合、債権者が組織変更について承認したものとみなされ、組織変更計画で定めた「効力発生日」に合同会社から株式会社へと組織変更することになります。

手順5. 登記申請

合同会社から株式会社への組織変更の効力発生日した後、必要な書類を揃えたうえで組織変更の登記申請をしなければなりません。そのため、組織変更の効力発生日から2週間以内に、「組織変更前の合同会社の解散登記」、「組織変更後の株式会社の設立登記」をする必要があります。また、解散登記と設立登記の申請は、同時にする必要があります。

<主な必要書類>
・組織変更計画書
・組織変更後の株式会社の定款
・総社員の同意書
・組織変更後の株式会社の役員の就任承諾書
・資本金の払い込みがあったことの証明書
・組織変更後の株式会社の代表取締役の印鑑証明書
・組織変更後の株式会社の役員の本人確認書類

合同会社から株式会社へ組織変更する場合の税務上の取扱い

1. 合同会社及び株式会社の課税関係

会社の組織変更は、会社が法律上の同一法人格を維持したまま、他の種類の会社になることをいいます。組織変更をした場合の税務上の取扱いについては、その会社の同一性を重視し、その解散及び設立はなかったものとして取り扱うこととされています。具体的な組織変更する場合の税務上の取扱いを見ていきましょう。

資産及び負債は帳簿価額で移転される

組織変更前の合同会社の資産及び負債は、その帳簿価額を変更することなく、組織変更後の株式会社に移転されます。そのため、組織変更に伴う資産及び負債の移転に関して、税務上においても譲渡損益が発生することなく、課税関係が生じることはありません。

法人税の事業年度や消費税の課税期間は継続される

合同会社から株式会社へ組織変更をした場合であっても、法人税の事業年度や消費税の課税期間については、その組織変更によって区分されることなく継続されます。

税務上の欠損金も引き継がれる

組織変更前の合同会社が税務上の欠損金を有している場合、組織変更後の株式会社にそのまま引き継がれます。

2. 社員及び株主の課税関係

合同会社から株式会社へ組織変更をした場合、組織変更前の合同会社の社員は、組織変更後の株式会社の株主になります。組織変更した場合の社員及び株主の税務上の取扱いは、以下のとおりてす。

組織変更前の合同会社の社員に、組織変更後の株式のみを交付する場合

組織変更により、組織変更前の合同会社の出資持分に代えて、組織変更後の株式のみを交付する場合には、その出資持分の取得価額がその株式の取得価額に引き継がれるため、課税関係が生じません。

組織変更前の合同会社の社員に、組織変更後の株式以外の資産を交付する場合

組織変更により、組織変更前の合同会社の出資持分に代えて、組織変更後の株式以外の資産(例えば、現金など)を交付する場合には、みなし配当課税の対象となることがあります。なお、みなし配当課税とは、法人税法上の配当ではないものの、実質的に剰余金の配当と変わらないため、法人税法上の配当とみなして、課税することをいいます。

合同会社から株式会社へ組織変更するメリット

合同会社から株式会社へ組織変更するメリットは考え方によって様々ですが、主に以下のようなメリットが挙げられます。

1. 会社の社会的な信用度や知名度が向上する

合同会社は、2006年の会社法の改正で新設された会社形態のため、株式会社と比べて、合同会社という会社形態の歴史は浅く、必ずしも社会的な信用度や知名度が高いとは言えないのが実情です。

また、合同会社の代表者の肩書は「代表社員」といいますが、株式会社の代表者の肩書は「代表取締役」といい、代表者の肩書についても、株式会社の方が信用度や知名度が高いといえます。

そのため、社会的な信用度や知名度の向上が期待できることは、株式会社に変更するメリットであるといえます

2. 外部から資金調達しやすくなる

株式会社は、新株を発行することにより出資者を募り、資金調達することができます。また、株式会社の場合、必ずしも出資者=役員となる必要はないため、柔軟に出資者を募ることができます。もちろん、出資者である株主が役員になることも可能です。

一方、合同会社の場合、出資者=役員となります。合同会社の出資者兼役員は、「社員」と呼ばれ、会社に対して有限責任を負うことになります。出資者が会社の経営に関与する必要があり、株式会社と異なり純粋な出資者を募ることができません。

そのため、株式会社の方が合同会社と比べて、資金調達をするためのハードルが低く、株式会社へ組織変更することで出資者を募りやすくなるというメリットがあるといえます。

合同会社から株式会社へ組織変更するデメリット

合同会社から株式会社へ組織変更すると、合同会社であることのメリットを享受できなくなるというデメリットもあります。

1. 決算公告の義務が生じる

合同会社は、決算公告の義務がありません。一方で、株式会社では、株主総会の開催後に決算公告することが義務付けられており、費用と事務負担がかかります。

2. 定期的な役員登記が生じる

合同会社は、社員の任期を定める必要がありません。そのため、社員が加入、脱退しない限り、社員の重任登記をする必要ありません。一方で、株式会社では、役員の任期は最長10年となっているため、少なくとも10年に一度は役員の重任登記を行う必要があり、費用と事務負担がかかります。

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おわりに

合同会社から株式会社への組織変更の手順やメリット・デメリットを解説してきました。
組織変更にはメリット・デメリットがあるので、自社の経営方針も踏まえて、組織変更をするべきか否かを慎重に判断する必要があります。また、合同会社から株式会社への組織変更は、手続き開始から1.5ヶ月~2ヶ月ほどかかります。そのため、組織変更をする際は、手順をよく理解し、十分に余裕をもったスケジュールを確保して手続きを進めるとよいでしょう。

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