会社設立のやり方・手続きとは?株式会社の設立の流れを徹底解説!

2006年の会社法改正により、最低資本金制度の廃止、株券の不発行など、会社設立や運営に関する緩和が行われ、会社設立のハードルが低くなりました。そのため、近年、起業しようとするときに、個人事業主ではなく、「会社を設立したい!」と考える方も多いのではないでしょうか。

しかし、いざ独力で会社設立しようと考えても、「どのような手続きをすればいいのか?」、「どのくらい設立費用がかかるのか?」など、分からないことがあまりに多く、途方に暮れてしまっている方がほとんどだと思います。

この記事では、株式会社を設立する際に必要な手続きや書類を徹底解説していきます。

目次

会社を設立するメリット

新しく事業を始めるときに、個人事業主として開業するか、株式会社などの会社を設立して起業するかのいずれかを選択することになります。個人事業主として開業する場合には、納税地の税務署に開業届を提出するだけで、手続き上は完了し、直ぐに開業することができます。
一方で、会社を設立する場合には、法令上求められるいくつかの手続きを実施する必要があるため、個人事業主の開業と比較すると、事務手続きや費用がかかります。

しかし、会社の場合、個人事業主では受けることができない様々なメリットがあります。会社を設立することのメリットとしては、主に次のようなものが挙げられます。

1. 社会的な信用を得やすい

会社を設立すれば、社会的な信用を得やすいことがメリットの一つといえます。
会社を設立するために、商号や住所、資本金などの情報を法務局に提出し、登記を行う必要があります。この登記した情報は誰でも閲覧することができるため、会社としての責任が明確化されており、社会的な信用力の向上に役立ちます。

販売先や仕入先によっては、会社としか取引契約を締結しないという方針の会社や、個人事業主と取引する場合には少額の取引しか行わないという会社もあるでしょう。また、社会的な信用が得やすい会社では、優秀な人材の採用や金融機関からの融資などの様々な場面で、有利になることも多いでしょう。

2. 節税ができる

株式会社をはじめとした会社は、個人事業主と比べて、節税効果を受けられるというメリットもあります。会社は、個人事業主よりも経費として認められる範囲が広いことや、優遇措置が受けられることなどにより節税効果が期待されます。

<主な節税効果>
・欠損金の繰越期限の延長
・比例税率の適用
・役員報酬の損金算入
・中小企業の優遇税制の適用
・法人として生命保険への加入

また、個人事業主の場合、所得が増えれば増えるほど、より高い税率が適用される超過累進課税制度が導入されています。一方で、法人の場合、所得の金額に関わらず、一律の税率が適用される比例税率であるため、所得が増えるほど節税効果が期待されます。

3. 決算月を自由に決定できる

個人事業主は、法令上、毎年1月1日から12月31日までの1年間と事業年度が決められているため、決算月は12月になります。一方で、会社の場合には、自由に決算月を設定することができます。そのため、会社の繫忙期や資金繰りなどを考慮して、決算月を決定することができます。

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会社設立の流れ・手順

会社を設立するまでの手順としては、次のとおりです。それぞれの手順について、具体的に解説していきます。

<会社設立の手順>
手順1:会社概要を決定する
手順2:法人実印を作成する
手順3:定款を作成し、公証役場で認証を受ける※
手順4:資本金の払い込みをする
手順5:登記申請書類を用意する
手順6:法務局で登記申請する

※ 合同会社の場合は、定款の認証は必要ありません。

手順1:会社概要を決定する

まずはどのような会社を設立するのか、会社の基本事項を決定しなければなりません。そのため、以下の事項は決定しておく必要があります。これらの基本事項は、後述する定款に記載が必要となる事項のため、明確に決定しておきましょう。

<会社概要>
・事業の目的
・商号
・本店所在地
・設立時の資本金
・発起人の氏名と住所
・発起人の出資額
・発行可能株式総数
・設立時に発行する株式数
・株式譲渡制限の有無
・事業年度
・公告方法
・設立時代表取締役・取締役

手順2:会社実印を作成する

法務局に設立登記を申請する際に、会社の実印が必要になります。そのため、商号(社名)が決まり次第、まずは会社の実印を作成しましょう。また、印鑑届出書の作成も忘れないようにしましょう。

会社を設立する手続きには必要ありませんが、会社実印と合わせて、銀行印と角印も作成しておくと会社設立後の銀行口座開設や事業開始に向けた準備がスムーズになるでしょう。

手順3:定款を作成し、公証役場で認証を受ける

定款(ていかん)とは、会社の基本情報や規則などをまとめたもので、「会社のルールブック」というイメージをしてもらうと分かりやすいでしょう。その定款に記載する事項は、手順1で決定した会社概要を中心に、「絶対的記載事項」や「相対的記載事項」、「任意的記載事項」を記載することになります。

<絶対的記載事項>
・事業の目的
・商号
・本社所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名と住所

定款を作成する際には、決まった様式はありませんが、「紙定款」、「電子定款」の2つがあります。紙定款の場合には、一般的なパソコンで作成し、印刷・製本します。一方で、電子定款は、定款のPDFデータを電子認証します。紙定款の場合には必要となる収入印紙(4万円)が電子定款の場合には必要なくなるため、最近では電子定款を選択する会社が増加傾向にあります。ただし、電子定款を作成するために、電子認証の専用ソフトや機器を購入する必要があるため、少しハードルが高い傾向にあります。

株式会社を設立する場合は、定款を作成した後、公証役場で、その定款が正当な手続きにより作成されたことを証明してもらいます。これを「定款の認証」といいます。なお、合同会社を設立する場合には、定款の認証は必要ありません。

手順4:資本金の払い込みをする

資本金の払い込みは、手順3の公証役場での定款認証が完了した後に行います。資本金の払い込み時点では、会社の設立登記の前に行うため、会社の銀行口座は開設することができません。そのため、資本金の払込先は、発起人の個人口座になります。

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手順5:登記申請書類を作成する

法務局で会社の設立登記を申請するための登記申請書類を作成します。用意する書類は、個社の状況に応じて異なりますが、一般的な株式会社の登記申請書類は次のとおりです。

<株式会社の登記申請書類>
・設立登記申請書
・登録免許税相当の収入印紙
・定款
・発起人決定書
・設立時取締役の就任承諾書
・発起人の印鑑証明書
・資本金の払い込みがあったことを証する書面
・印鑑届書
・印鑑カード交付申請書

手順6:法務局で登記申請する

登記申請は、原則として、会社の代表者になる方が行いますが、司法書士が代理申請することもできます。代理人が登記申請する場合には、手順5の登記申請書類に加えて、委任状を作成する必要があります。

登記申請書類に不備がなければ、登記申請後、1~2週間程度で登記が完了し、無事に会社の設立が完了します。その後、登記簿謄本や印鑑証明書、印鑑カードが交付されます。

なお、会社の設立日は、原則として、法務局に登記申請書を提出した日となります。

会社設立にかかる費用は?

会社の設立費用は、株式会社又は合同会社のいずれの会社形態によるかで金額感が異なります。大まかには、株式会社の場合には約242,000円~、合同会社の場合には約100,000円~の設立費用がかかります。また、「電子定款」を選択した場合には、定款用の収入印紙代が不要になりますので、株式会社の場合には約202,000円~、合同会社の場合には約60,000円~の設立費用になります。

なお、司法書士や行政書士等の専門家報酬は含んでおりませんので、代表者ご自身で会社を設立する場合の費用になります。

<会社設立費用>

項目株式会社合同会社
定款用の収入印紙代40,000円40,000円
定款の認証手数料50,000円0円
定款の謄本手数料2,000円0円
登録免許税150,000円~60,000円~
法定費用合計約242,000円~約100,000円~

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会社設立後の手続き

無事に会社設立が完了したら、次に事業を開始する前に様々な手続きを行わなければなりません。提出期限が短いものもあるため、事前に確認しておくようにしましょう。また、法令上、許認可などが必要な事業を行う場合には、別途、行政書士などに依頼するようにしましょう。

1. 銀行口座を開設をする

会社設立が完了したら、まずは法人名義の銀行口座を開設するようにしましょう。個人事業主と比べて、法人の方が、金融機関の審査基準が厳しく、口座開設までに時間がかかることが多いため、必要書類を用意して、速やかに法人口座の開設手続きをしましょう。なお、口座開設に必要な書類は、金融機関ごとに異なりますので、事前に金融機関のホームページ等で確認しておきましょう。

<必要書類(例)>
・法人の登記簿謄本(履行事項全部証明書)
・法人の定款
・法人の銀行印
・法人の印鑑証明書
・代表者の印鑑証明書
・代表者の実印
・代表者の身分証明書

また、資金管理や振込手数料の節約のため、法人口座を2つ開設することをおすすめします。

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2. 税務署等の行政機関へ法人設立届出書を提出する

会社設立が完了したら、会社設立から2ヶ月以内に、会社所在地の税務署や都道府県税事務所、市町村役場に「法人設立届出書」を提出する必要があります。

また、会社設立から3ヶ月以内となっていますが、税務署に「青色申告の承認申請書」も同時に提出するようにしましょう。万が一、青色申告の承認申請書の提出が漏れてしまうと、その後、税制上の優遇が受けれられず、不利益を被りますので、必ず提出しましょう。

3. 社会保険の加入手続きをする

会社設立後に、従業員を雇用する場合には、税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」や年金事務所、労働基準監督署、ハローワークに各種届出を提出する必要があります。

おわりに

会社を設立するまでには、そして、事業を開始するまでには様々な手続きが必要になります。しかし、事前に手順を理解し、十分な準備をすることで問題なく、会社設立することができます。
会社設立で大事なことは、しっかりと手順と期限を守ることです。独力で手続きを進めることが不安な方は、専門家のアドバイスやサポートを受けながら、会社設立をすることで計画通りに漏れなく手続きを進められるでしょう。

ARDOR税理士事務所では、会社設立・組織変更、創業融資、税務・会計顧問まで幅広くサポートを行っておりますので、お悩みごとがあればぜひお気軽にご相談ください。

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