源泉所得税の納期の特例とは?
源泉徴収義務者である会社や個人事業主は、源泉徴収した所得税を納付期限までに所轄の税務署に納付することになっています。原則として、毎月10日に納付する必要がありますが、要件によってはその源泉所得税を半年分まとめて納付することができる納期の特例制度があります。
この記事では、源泉徴収制度の仕組みや納付期限の特例について解説していきます。
目次
源泉徴収制度の仕組み
所得税は「申告税」で、原則として、実際に所得を得た所得者が確定申告して、納税することとされています。
しかし、所得税の課税対象者の全員が確定申告を行うと、「税務署の混雑」、「確定申告の忘れ」「所得税の徴収漏れ」などの事態が発生することが想定されます。そのため、会社や個人事業主が給与又は報酬の支払いを行う場合、給与から所得税分(復興特別所得税含む)を事前に差し引いて、従業員や業務受託者の代わりに所得税の納付を行います。
これが「源泉徴収制度」と呼ばれる仕組みで、原則として、すべての会社及び個人事業主は、源泉徴収を行う義務があります。この源泉徴収を行う会社及び個人事業主のことを「源泉徴収義務者」といい、源泉徴収した所得税のことを「源泉所得税」といいます。
源泉所得税の納付期限
源泉徴収義務者である会社や個人事業主は、源泉所得税を納付しなければなりません。
源泉所得税の納付は、原則として、給与や報酬などを実際に支払った月の翌月10日までとなっています。すなわち、源泉所得税は毎月の納付が原則となっています。
例えば、4月25日に給与の支払いをした場合、5月10日が源泉徴収した所得税の納付期限となります。
源泉所得税の納期の特例とは?
源泉所得税は、原則として、毎月納付が求めれていますが、給与の支給人員が常時10人未満の場合、源泉所得税を半年分まとめて納めることができる特例制度があります。
<源泉所得税の納期の特例>
1月から6月までに支給した給与や報酬からの源泉所得税・・・納付期限 7月10日
7月から12月までに支給した給与や報酬からの源泉所得税・・・納付期限 翌年1月20日
ただし、この納期の特例の適用対象となるのは、従業員の給与や退職金、税理士や弁護士、司法書士等の報酬からの源泉所得税に限定されていいます。そのため、デザイン料や講演料、原稿料などからの源泉所得税は、納期の特例は適用できず、原則のとおり毎月の納付が必要となりますので、注意が必要です。
源泉所得税の納期の特例を受けるためには?
源泉所得税の納期の特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出する必要があります。提出期限は定められておらず、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税から、納期の特例が適用されます。
例えば、4月に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出した場合、5月から源泉徴収する所得税について、納期の特例が適用されます。すなわち、4月分の源泉所得税については5月10日に納付する必要があり、5月分・6月分の源泉所得税については7月10日に納付することになります。
源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合
源泉所得税の納期の特例の適用を受けている源泉徴収義務者が、納期の特例の要件に該当しなくなった場合(給与の支給人員が常時10人以上になった場合)、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出する必要があります。
納期の特例の要件に該当しなくなった事実が発生した場合には、遅滞なく届出書を提出する必要があります。この届出書を提出した場合、その提出をした日が属する納期の特例の期間内に源泉徴収した税額のうち、その提出の日の属する月分以前の各月に源泉徴収した所得税は、その提出の日の属する月の翌月10日までに納付し、その後の各月に源泉徴収した税額は、毎月翌月10日までに納付することになります。
例えば、5月に「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出した場合、1月から5月分までの源泉所得税については6月10日に納付する必要があり、6月分以降の源泉所得税については翌月10日に納付することになります。
おわりに
源泉所得税の納期の特例を受けられるのは、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者に限られますが、納税にかかる事務負担を軽減することができます。納期の特例を受けられるか否かを検討のうえ、活用してみてはいかがでしょうか。
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