発行可能株式総数とは?その必要性や決め方を解説!

株式会社を設立する際に決めなければならない事項がたくさんありますが、その中の一つに定款に定める必要がある「発行可能株式総数」というものがあります。しかし、株式関連の事項は多くの人にとって頭を悩ませるのではないでしょうか。

この記事では、発行可能株式総数を定める必要性や決め方を解説していきます。

発行可能株式総数とは?

発行可能株式総数とは、株式会社が発行することができる株式の総数のことです。すなわち、発行可能株式総数は、その会社が発行できる株式の総数の上限であり、発行可能株式総数を超えて株式を発行することはできません。

仮に、発行可能株式総数を超えて株式を発行したい場合には、事前に発行可能株式総数の上限を引き上げる定款変更を株主総会の特別決議により実施する必要があります。

発行可能株式総数を定める必要性

なぜ定款に発行可能株式総数を定める必要性があるのでしょうか。それは、資金調達の機動性を確保すると同時に、取締役会の権限乱用を防止するためと、いわれています。

1. 資金調達の機動性の確保

資金調達の方法の一つに新株発行がありますが、新株発行をすると既存株主の持株比率に変動が生じる可能性があります。そのため、既存株主にとって非常に重要な事項であり、原則として、株主総会決議をもって新株の発行を行うことになります。

しかし、株主総会の開催には、時間がかかります。そのため、定款に発行可能株式総数を定めておくことで、発行可能株式総数の枠内に限り、通常、必要な株主総会決議を経ることなく、取締役会決議をもって新株発行による資金調達を実施することができるようにしています。すわなち、取締役会に権限を与え、資金調達の機動性を確保するため、といえます。

2. 取締役会の権限乱用防止

資金調達の機動性を高めるという意味では、もはや発行可能な株式数の上限を決めなければいいのではないか、と思われるでしょう。

しかし、取締役会が際限なく、新株を発行できてしまうと、既存株主の持株比率が希薄化してしまい、既存株主が不利益を被ることになってしまいます。そのため、定款に発行可能株式総数を定めることで、取締役会の権限乱用を防止することとされています。

発行可能株式総数の制約条件

まずは、発行可能株式総数に関して、会社法で定められている制約を確認しておきましょう。

1. 公開会社の場合

公開会社の場合、発行可能株式総数は、「発行済株式総数の4倍まで」という制約があります。

<具体例>
発行済株式総数:100株
発行可能株式総数の上限:400株(=発行済株式総数100株×4倍)

2. 非公開会社の場合

会社設立時において、ほとんどの会社は非公開会社として設立することになるでしょう。

非公開会社の場合、公開会社のような制限はないため、発行可能株式総数を自由に設定することができます。そのため、極端に言ってしまえば、発行可能株式総数を発行済株式総数の100倍や1,000倍に設定することもできます。

発行可能株式総数の決め方

発行可能株式総数は、公開会社は発行済株式総数の4倍まで、非公開会社は制約なし、ということではありますが、それでは、発行可能株式総数はどのように決めたらいいのでしょうか。

結論としては、発行可能株式総数は余裕を持った多めに設定することが好ましく、目安の一つとしては、以下のような考え方があるといえるでしょう。

<目安>
・公開会社の場合:発行済株式総数の4倍
・非公開会社の場合:発行済株式総数の10倍から30倍程度

発行可能株式総数に十分な余裕がないと、将来の新株発行ができる枠が少なくなり、発行可能株式総数を超えて株式を発行したい場合には、株主総会の特別決議により定款変更しなければなりません。また、発行可能株式総数は登記事項であり、定款変更に伴い登記手続きが必要となり、費用や事務負担がかかります。そのため、発行可能株式総数は可能な限り余裕を持たせた方がいいでしょう。

おわりに

将来の資金調達の可能性も視野に入れながら、発行可能株式総数は可能な限り余裕を持った多めに設定しておいた方がいいでしょう。会社設立に際して、発行可能株式総数の判断に悩まれる場合には専門家に相談することおすすめします。

ARDOR税理士事務所では、会社設立、創業融資・資金調達、税務・会計顧問まで幅広くサポートを行っておりますので、お悩みごとがあればぜひお気軽にご相談ください。

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