株式会社の代表取締役は複数人できる?メリット・デメリットやよくある誤解を解説!
代表取締役といえば、株式会社の代表者です。一般的に、株式会社の代表取締役は、会社経営するうえで最も重要な決定権を有しているため、1名だけを選定している会社が大半でしょう。
しかし、共同創業した場合など、会社の状況によっては、複数人の代表取締役を選定したいという要望を持たれている経営者もいるのではないでしょうか。
この記事では、代表取締役を複数選定する場合のメリット・デメリットやよくある誤解を解説していきます。
目次
複数人の代表取締役を選定できるのか?
そもそも複数人の代表取締役を選定できるのか、と思われるの方も多いのではないでしょうか。
結論としては、会社法上、代表取締役の人数は制限されていません。すなわち、会社の状況に合わせて、代表取締役を複数選定することも可能となっています。
とはいえ、複数人の代表取締役を選定している会社はそれほど多くないため、複数人の代表取締役を置いた場合のメリット・デメリットを踏まえて慎重に検討する必要があります。
代表取締役を複数選定するメリット
まず代表取締役を複数選定するメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
1. 代表取締役の業務負荷を軽減できる
たとえ創業間もない小規模な会社であったとしても、代表取締役が担うべき職務範囲は広く、代表取締役の業務負荷が重くなる会社も多くあります。そのような会社の場合、代表取締役を複数選定し、職務範囲を分担することで、業務負荷を軽減することができます。
2. 共同創業の場合に公平性を保つことができる
2人以上で会社を共同創業する場合、いずか1人だけが代表権を持つと、共同創業者間での不公平感や不満が生じる可能性があります。そのため、代表取締役を複数人選定することで、共同創業者の全員が会社経営に対するコミットメントやモチベーションを維持・向上することが期待されます。
3. ワンマン経営の弊害を防止できる
代表取締役が1人の場合、ワンマン経営になってしまう恐れがあります。それに対して、代表取締役を複数人選定することで、権限が1人に集中することなく分散されるため、ワンマン経営の弊害を防止することができます。
代表取締役を複数選定するデメリット
代表取締役を複数選定するデメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
1. 意見の対立が生じた場合の調整が困難になる
共同創業社の全員が代表取締役になった場合、各代表取締役が単独で代表権を行使できるようになるため、代表取締役間で意見の対立が生じた場合には調整が困難になる可能性があります。
2. 対外的な窓口が不明確になる
代表取締役が複数人いる場合、取引先などの社外の人から見たときに、どの代表取締役と交渉や協議をする必要があるのか、不明確になりやすいです。そのため、どの代表取締役が何の担当をしているのか、あらかじめ対外的に明示しておくとよいでしょう。
代表取締役を複数選定する場合のよくある誤解
1. 代表取締役全員の意見が揃わないと何もできないという誤解
友人と共同創業して、代表取締役を複数選定した場合、「私たちは共同代表である」と誤解している方が多くいらっしゃいます。
共同代表とは、「共同で」代表権を行使するという考え方になります。すなわち、代表取締役全員の意見が揃わないと何もできないという状態を指します。しかし、代表取締役を複数選定した場合、実際には「単独で」代表権を行使することができる立場の人が複数人いるという状態になります。
代表取締役を複数選定した場合、ある代表取締役が単独で金融機関からの借入を行うことや取引先と契約を締結することが可能となります。そのため、会社内での意思に反した契約締結などの行為をされてしまうリスクが生じます。
2. 法人実印を共有できるという誤解
法人実印というと、文字通り読むと「法人の」実印のため、代表取締役を複数選定した場合でも、複数の代表取締役で一つの印鑑を共有できると誤解している方が多くいらっしゃいます。
法人実印は、各代表取締役と紐づいているため、法務局に印鑑届出をしている代表取締役しか法人実印を使うことはできません。そのため、代表取締役を複数選定する場合には、次のいずれかの方法をとることになります。
方法1. 代表取締役1名だけが法人実印を管理する
1つ目は、代表権は各代表取締役が有している状態に変わりありませんが、契約の締結等で法人実印の押印が必要な場合には、法務局へ印鑑届出をしている代表取締役が代表者として押印するという方法です。会社としては、1つの法人実印だけを管理し、その他の代表取締役は法務局へ印鑑届出しないようにします。
方法2. 各代表取締役が法人実印を管理する
もう1つは、各代表取締役が法務局へ印鑑届出を行うという方法です。この方法では、2人の代表取締役がいる場合には、会社として2つの法人実印を管理することになります。
この方法をとる場合、当然のことながら、会社に2つの法人実印が存在することになるため、各代表取締役がその他の代表取締役に相談することなく、契約の締結等が行える状態になってしまいますので、実際に導入する際には事前に慎重に検討する必要があります。
おわりに
代表取締役を複数選定することは可能ですが、様々なメリット・デメリットもあるため、会社の経営方針を踏まえて慎重に検討・決定するようにしましょう。
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