法人成りに適したタイミングとは?法人成りのメリット・デメリットを解説!

個人事業主が法人化することを、一般的に「法人成り」または「法人化」といいます。

個人事業主として開業した後、順調に事業規模が拡大すると、法人成りを検討し始める方も多いのではないでしょうか。法人成りには、個人事業主では得られないメリットもあれば、法人成りすることによるデメリットもあります。

また、法人成りするタイミングも非常に重要です。どのタイミングで法人成りするのが良いか、そもそも法人成りすべきかなど悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、法人成りに適したタイミングや法人成りのメリット・デメリットをご紹介します。

法人成りに適したタイミング

ここでは、法人成りに適したタイミングについて、2つのポイントをご紹介します。
あくまで一般論ですので、ご自身の状況に合ったタイミングを見つけて、実際に法人成りしましょう。

<法人成りのタイミング>
課税所得(≒利益)が800万円を超える
課税売上高が1,000万円を超える

タイミング1:課税所得(≒利益)が800万円を超えた

法人成りのタイミングを課税所得で判断する理由は、同じ課税所得であっても、法人と個人事業主とで負担することになる税金の金額が大きく異なるためです。

個人事業主の場合、課税所得に対して「所得税」が課税されます。所得税は超過累進課税制度と呼ばれ、課税所得が増えれば増えるほど、税率は高くなり、その税率は最低5%~最大45%とされています。

一方で、法人の場合、課税所得に対して「法人税」が課税されます。法人税は、所得税と異なり、その税率は原則として。一律23.2%であり、そのほかの税負担を考慮した法人税等の実効税率は30%程度といわれています。

そのため、税負担を考慮して、所得税率が法人税率を上回るタイミングで法人成りするとよいでしょう。その具体的な課税所得の目安が800万円というわけです。ただし、所得控除や事業所得以外の所得の状況が個人事業主ごとによって違い、税務上の有利又は不利が異なることもあるため、実際に法人成りを検討する際は税理士に相談することをおすすめします。

タイミング2:課税売上高が1,000万円を超えた

法人成りのタイミングを課税売上高で判断する理由は、消費税の納税義務者に該当するかどうかに影響するためです。

消費税の納税義務が発生するパターンとしては、主に以下の2つがあります。しかし、いずれの場合においても、法人成りした新設法人は、個人事業主とは別人格であり、個人事業主の過去の課税売上高が、消費税の納税義務の判定に影響することはありません。すなわち、新設法人の場合、納税義務の判定に必要となる前々事業年度の課税売上高が存在しないため、免税事業者に該当し、消費税の納税義務が免除されます。

ただし、消費税の納税義務の判定には、資本金などその他の要件も存在するため、実際に法人成りを検討する際は税理士に相談することをおすすめします。

パターン1:前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えたとき

個人事業主も法人もともに、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える場合、課税事業者となり消費税の納税義務が発生します。

しかし、個人事業主が法人成りすることで、課税事業者となるタイミングを2年間先送りすることができます。

パターン2:前事業年度の上期(6ヶ月)の課税売上高が1,000万円を超えたとき

前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であったとしても、前事業年度の上期(6ヶ月)の課税売上高が1,000万円を超えた場合も、課税事業者となり消費税の納税義務が発生します。

しかし、この場合も個人事業主が法人成りすることで、課税事業者となるタイミングを2年間先送りすることができます。

【関連記事】

消費税の課税事業者とは?納税義務の判定方法を解説!

消費税の課税事業者とは、消費税を納付する義務がある法人または個人事業主のことをいいます。原則として、法人、個人を問わず、事業者は消費税を納付する義務があります…

法人成りのメリット

個人事業主から法人成りするメリットは、主に以下の3つがあります。一般的に、法人成りのメリットは、節税対策が謳われることが多いですが、そのほかにも事業規模の拡大という面からもメリットがあります。

1. 節税対策になる

法人成りの大きなメリットの一つに、節税対策にあります。

<具体例>
・所得税よりも法人税の方が、税率が低くなる
・消費税の免税事業者に該当すれば、会社設立後2年間は免税になる
・欠損金の繰越期間(3年→10年)が長くなる
・役員報酬に給与所得控除を適用することができる
・役員退職金を損金算入することができる

2. 社会的な信用度が向上する

一般的に、個人事業主よりも法人の方が、社会的な信用度や知名度が高くなります。

そのため、新規取引先の開拓がしやすくなったり、資金調達がしやすくなったり、優秀な人材を獲得しやすくなるなどの効果が期待されます。また、取引先を法人に限定している会社も存在するため、法人化することで取引先や活動の幅が広がるといえるでしょう。

3. 各種社会保障の対象となる

法人成りすると、社会保険への加入が義務化されます。

社会保険に加入すると社会保険料の負担が増加しますが、個人事業主の国民年金から厚生年金に切り替わるため、従業員も含め、手厚い保険を受けることができるようになります。

また、福利厚生が充実し、従業員の採用がしやすくなり、離職率を低下させるなど、優秀な人材を確保するという面でも有利になることが期待されます。

法人成りのデメリット

個人事業主の法人成りはメリットも多いですが、同時に個人事業主としてのメリットが失われることになります。法人成りすることのデメリットもご紹介しますので、法人成りを検討する際はぜひ覚えておきましょう。

1. 事務負担が増加する

法人成りする場合、会社設立手続きをしなければなりません。

また、会社設立後においても、法人は個人事業主よりも、会計や税務、人事労務などの事務負担が増加します。そのため、多くの会社では、会計や税務関連では税理士、人事労務関連では社会保険労務士などの専門家に依頼することになります。

2. 社会保険負担が増加する場合がある

個人事業主の場合、常時雇用する従業員数5人未満であれば社会保険への加入は任意となっています。一方で、法人の場合、従業員数に関わらず、社会保険への加入が義務化されています。

そのため、従業員の人数によっては、新たに社会保険料の会社負担や各種届出などの事務負担が増加する可能性があります。

おわりに

法人成りに適したタイミングとして、「課税所得(≒利益)が800万円を超えた」、「課税売上高が1,000万円を超えた」、という2つのポイントをご紹介しました。また、法人成りのメリット・デメリットも踏まえて、継続的に事業を拡大させていきたいという方は、ぜひ法人成りを検討してみてはいかがでしょうか。

ARDOR税理士事務所では、会社設立・組織変更、創業融資、税務・会計顧問まで幅広くサポートを行っておりますので、お悩みごとがあればぜひお気軽にご相談ください。

お問い合わせ

税務・会計・経営に関するお悩みやご相談内容をまずはお気軽にお聞かせください。ご相談やお見積りは無料で承ります。