会社設立時の株主構成はどう決める?押さえておくべき持株比率を解説!
株式会社を設立する際に決めなければならない事項がたくさんありますが、その中の一つに「会社設立時の株主構成」というものがあります。すなわち、株式会社を設立する際に誰が、いくら出資するのか、決める必要があります。もちろん、社長1人で会社を設立する場合には、全額出資すればよいのですが、複数人で共同創業する場合や外部のスポンサーに出資してもらう場合には、株主構成を特に慎重に検討する必要があります。
株主構成は会社の意思決定に重要な影響を与えるだけでなく、一度、決めてしまうと変更することが相応に難しいという性質があります。そのため、誤った株主構成で会社設立してしまったばかりに、経営が破綻してしまうケースも珍しくありません。
この記事では、会社設立時の株主構成の重要性や押さえておくべき持株比率を解説していきます。
目次
株主とは?
株主とは、株式会社の株式を保有する者のことをいいます。株主は、株式会社のオーナーであるため、持株比率に応じて株式会社に対する様々な権利が与えられます。これを「株主権」といいます。
株主権とは?
では、株主権にはどのようなものがあるのでしょうか。
株主には、主に「議決権」、「配当請求権」、「残余財産分配請求権」の3つの権利があります。
1. 議決権
議決権とは、株主総会に出席し、決議に参加できる権利のことをいいます。すなわち、経営方針、役員人事や組織再編などの会社経営における重要な意思決定に対して、意見を示し、議決権を行使することができます。
2. 配当請求権
配当請求権とは、会社の利益を分配金である「配当金」を請求し、受け取ることができる権利のことをいいます。一定期間あるいは特定の日において株式を保有している株主に権利が付与されます。
なお、株主としては配当を受け取りたいという思いと、経営者としては将来の投資に使うため内部留保したいという思いが対立することも珍しくありません。
3. 残余財産分配請求権
残余財産分配請求権とは、万が一会社が解散・清算するようなときには、すべての会社債権者に債務を返済したあとに残った会社財産に対して、「残余財産分配」を請求し、受け取ることができる権利のことをいいます。
仮に、会社財産をすべて処分したとしても、会社債権者に債務を返済しきれない場合には、株主への会社財産の分配は行われません。また、株主が会社に代わり、会社債権者に債務を返済するということもありません。これを株主有限責任の原則といいます。
株主構成とその重要性
1. 株主構成とは?
株主構成とは、「その会社の株式を誰がどのくらいの比率で保有しているか」ということです。会社設立時の株式構成は、発起人による出資額に応じて決まります。
また、「特定の株主がその会社の株式のうち、どのくらいの比率を有しているか」を「持株比率」といいます。
イメージし易いように具体例を用いて、株主構成と持株比率をみてみましょう。
<具体例>
発起人Aが700万円、発起人Bが300万円を出資し、出資総額1,000万円で会社を設立した場合
・株主構成
発起人Aの持株比率:70%(=発起人Aの出資額700万円÷出資総額1,000万円)
発起人Bの持株比率:30%(=発起人Aの出資額300万円÷出資総額1,000万円)
2. 株主構成の重要性
では、なぜ株主構成が重要なのでしょうか。
株式会社において、経営上の重要な意思決定は、株主総会で決議することになります。そのため、株主権の一つである議決権が重要になり、この議決権は基本的に持株比率に応じて与えられます。すなわち、持株比率が高ければ高いほど、株主総会において自分の意見を通すことができるようになります。
特に会社設立時において、誤った株主構成にしてしまうと、会社経営における重要な意思決定がスムーズに行えなくなる恐れがあります。正しい意思決定ができないと、会社経営が立ち行かなくなってしまい、最悪の場合には倒産や解散ということもあり得るでしょう。
それだけ、株主構成は非常に重要となりますので、慎重に決定するようにしましょう。
押さえておくべき持株比率
株式会社の会社経営における重要な意思決定は、株主総会で決議するため、当然にして持株比率が高ければ高いほど、自由な意思決定をすることができます。そのなかでも、いくつか持株比率には、重要な境目が存在するため、よく理解したうえで、株主構成を決めるようにしましょう。ここでは、押さえておくべき、持株比率の境目を解説していきます。
1. 持株比率100%
持株比率100%の場合、会社経営におけるすべての意思決定を自由に行うことができます。一人で起業した場合には、最初は持株比率100%の状態で会社がスタートします。
2. 持株比率66.7%(3分の2)以上
持株比率66.7%(3分の2)以上の株主は、株主総会の特別決議を単独で可決させることができます。そのため、定款の変更や事業譲渡、合併・会社分割、解散などの経営上の重要な意思決定を行うことが可能となります。
そのため、自分一人で会社経営していきたいという場合には、持株比率66.7%(3分の2)以上を保有しておくべきといえるでしょう。
3. 持株比率50%(2分の1)超
持株比率50%(2分の1)超の株主は、株主総会の普通決議を単独で可決させることができます。そのため、取締役の選任・解任をはじめとして、経営上の多くの意思決定を行うことが可能となります。
なお、あくまで「過半数」であり、「以上」ではない点に注意する必要があります。すなわち、発行済株式総数が100株の場合には、51株を保有しておく必要があります。
4. 持株比率33.3%(3分の1)超
持株比率33.3%(3分の1)超の株主は、株主総会の特別決議を単独で否決させることができます。そのため、持株比率33.3%(3分の1)超の株式を保有させるということは、その株主にそれだけ強い権利を与えているということを十分に認識しておく必要があります。
5. 持株比率3%以上
持株比率3%以上の株主は、株主総会の招集請求権や会計帳簿の閲覧及び謄写請求権が認められています。会計帳簿の閲覧及び謄写請求権とは、株主が会社に対して総勘定元帳や補助元帳、関連証憑の閲覧やコピーすることを要求する権利です。
会社の重要な経営管理資料を閲覧できるようになるため、少しだと思って容易に株式を譲渡することは避けるべきといえるでしょう。
6. 持株比率1%以上
持株比率1%以上の株主は、株主総会の議案提出権が認められています。
安定経営に必要な持株比率
会社設立後、事業を軌道に乗せるためには、安定した経営を行う必要があります。そのために重要な要素の一つが業務遂行をする取締役の選任・解任が重要です。適切な取締役の選任を行うこと、もし選任した取締役が不適切であった場合には速やかに解任を行うことが必要があります。そのため、取締役の選任・解任をスムーズに行えるような持株比率を保持することが重要といえます。
株式会社においては、取締役の選任・解任を行うためには、株主総会の普通決議が必要になります。すなわち、安定経営を図るためには、持株比率50%超を保有しておくべきと言えます。
また、会社の規則である定款をスムーズに変更するができると、さらに安定した経営が可能となります。定款の変更を行うためには、株主総会の特別決議が必要となります。すなわち、持株比率66.7%以上を保有していれば、より安定した経営を実現できるでしょう。
資金調達はまず借入から検討すべき
会社設立後、事業を軌道に乗せるためには、設備投資資金や運転資金が必要になります。これらの資金を自己資金で賄えない場合には、資金調達を検討することになります。
会社設立時の資金調達の方法としては、「出資」、「借入」の2つがあります。
「出資」は外部のスポンサーから資金を募る方法であり、出資額に応じて設立する会社の株式を発行しなければならなりません。そのため、前述の持株比率の問題が生じ、出資額によっては外部の株主に会社を支配される可能性があります。
そのような問題を回避するためにも、会社設立時における資金調達は金融機関からの「借入」を検討すべきといえます。借入による資金調達の場合には、株主構成が変動することはありません。また、会社設立時には、日本政策金融公庫の創業融資制度を活用することで、事業実績がない人であっても、無担保・無保証で借入ができる可能性があります。
会社設立時の資金調達をご検討の方は、ぜひ日本政策金融公庫の創業融資制度を検討してみましょう。
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おわりに
会社設立時の株主構成で失敗しないように、株主構成の重要性や押さえておくべき持株比率などを解説してきました。持株比率が高ければ高いほど、株主として行使することができる権利も強くなっていきます。
一人で起業する場合にはさほど問題になりませんが、複数人で共同創業する場合には共同創業者としっかりと協議したうえで、株主構成を決めるようにしましょう。
ARDOR税理士事務所では、会社設立・組織変更、創業融資、税務・会計顧問まで幅広くサポートを行っておりますので、お悩みごとがあればぜひお気軽にご相談ください。
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