Q.

取締役の退任に伴い役員退職金の支給を予定しておりますが、その適正な額の算定方法について教えてください。

A.

法人が役員に支給する退職金のうち、適正額については損金の額に算入することができます。
過去の裁判例では、役員退職金の適正額の算定方法として「功績倍率法」と「1年当たり平均額法」という2つの方法が使われています。

1. 功績倍率法

功績倍率法は最もよく使用される方法で、次の計算式で示されます。

役員退職金の適正額 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率

なお、実務上、功績倍率は、東京高裁判決(昭和55年5月26日)が示した「社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6」が採用されることが多くなっています。

[具体例]
代表取締役社長の退職直前の役員報酬が月額100万円、役員在任期間が20年、功績倍率が3.0であった場合

[回答]
役員退職金の適正額は6,000万円となります。
最終報酬月額100万円 × 勤続年数20年 × 功績倍率3.0 = 6,000万円

2. 1年当たり平均額法

「退職直前の報酬月額」が、何らかの事情で、それ以前の報酬月額と比べて著しく低い(又は、高い)場合は、「功績倍率法」では適正な支給額を算定できない可能性があります。例えば、退職前年までの報酬月額は100万円だったが、退職直前に入院したことを理由で退職直前に30万円に減額したのまま退職したなどの特別な事情がある場合には、「功績倍率法」ではなく、「1年当たり平均額法」を使用することができます。

1年当たり平均額法は、次の計算式で示されます。

役員退職金の適正額 =(同種・同規模法人の役員退職金額 ÷ 同種・同規模法人の役員の在職年数)× 勤続年数

ただし、「同種・同規模法人の役員退職金額」及び「同種・同規模法人の役員の在職年数」が必要となりますが、一般に入手できる公表データからこれを正確に計算することは相当に難しいものと思われます。

[具体例]
同種・同規模法人の役員退職金額が3,000万円、同種・同規模法人の役員の在職期間が10年、退職した取締役の勤続年数が20年であった場合

[回答]
役員退職金の適正額は6,000万円となります。
(同種・同規模法人の役員退職金額3,000万円 ÷ 同種・同規模法人の役員の在職年数10年)× 勤続年数20年 = 6,000万円

《参考》
裁判所 事件番号「昭和52(行ウ)287」
国税庁 No.5208 役員の退職金の損金算入時期

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